
台湾旅行中に天気がいい日があれば、他の予定をすべてキャンセルしてでも訪れてもらいたいのが、淡水(ダンシュイ) です。MRTで気軽に行ける港町・淡水は、川と海が交わる美しい景色と、台湾屈指の夕日スポットとして知られています。
ただ、淡水は台北と同じく雨が多い地域で、美しい夕日を見れるタイミングが限られています。「また次回にしよう」なんて考えていたら、何年もチャンスが訪れないこともあります。また、事前に下調べしていないと見るべきものを見落とす可能性もあります。そうならないように、ここでは淡水のおすすめスポットなどを詳しく紹介していきます。
淡水の基本情報

台北MRTレッドライン(紅線)が「淡水線」となっており、いくつもの観光スポットを通ることもあるため、台湾旅行中に「淡水」の文字は何度も目にすることになります。ただ、「淡水」について知らない日本人も多いようですので、まずは淡水について簡単に解説していきます。
淡水は台北市の北西に位置する港町で、中国語読みは「ダンシュイ(Dànshuǐ)」。
そもそもは台湾原住民平埔族ケタガラン族が暮らしていましたが、17世紀にはスペインやオランダが進出。その後清朝時代を経て、日本統治時代にも国際的な港として発展したという歴史があります。ただし、日本統治時代に堆積により大型船の入港が難しくなったこともあり、港の機能の中心は基隆に移ります。
それにより、小さな漁村となってしまった淡水ですが、MRT淡水線の開通により台北から淡水方面へのアクセスがしやすくなったのもあり、台湾の歴史が残る観光地として発展していきます。
淡水最大の魅力は淡水河に沈む夕日です。河沿いの遊歩道や桟橋周辺から、空と水面がオレンジ色に染まる絶景を眺めることができるということで、夕方になるとカメラを持った観光客や地元の人々が集まります。誰もが太陽が沈む最後の瞬間まで、穏やかな時間の流れに身を任せる。そんな特別な風景がここにはあります。
また、淡水は観光地として多くの観光客がやってくることもあり、淡水老街を中心にローカルグルメが充実。阿給(アーゲイ)や鉄蛋(鉄玉子)などのご当地グルメを食べ歩きできるのも楽しみのひとつとなっています。
台北から淡水へのアクセス方法

淡水は台北市内からのアクセスが非常によく、MRTを使って乗り換えなしで行ける初心者向け観光地です。ただしMRTはアクセスに時間がかかります。滞在時間が短い旅行の場合は、MRTよりもタクシーがおすすめです。そこで、ここでは台北から淡水への2通りのアクセス方法をご紹介します。
MRTで淡水に行く方法(料金目安:50〜60元)
台北市街地から淡水まで、MRT淡水信義線(赤ライン)を利用します。
下車駅:淡水駅(Tamsui・終点)
所要時間
• 台北駅から約40分
• 中山駅から約35分
• 士林駅から約20分
淡水に行くための3つのステップ
- 赤い路線(淡水信義線)に乗る
- 行き先表示が「淡水」になっていることを確認
- 終点の淡水駅で下車すればOK
タクシーで淡水に行く方法(料金目安:600〜800元)
タクシーで淡水に行く場合は、運転手に「淡水駅まで」と伝えればOKです。中国語がわからない場合には筆談で問題ありません。
所要時間:約20分
料金の目安は600〜800元ですので、為替レートにもよりますが3,000〜4,000円と考えておきましょう。1人では割高ですが、4人乗車なら1人あたり1,000円以下です。それでホテルから淡水までロスなくアクセスできると考えるなら、選択肢としては悪くありません。
淡水観光の見どころスポット7選

淡水にはいくつかの観光スポットがあり、朝から夜までずっと楽しむことができます。その中でも見逃せないスポットを7つご紹介します。
淡水老街

淡水老街は、MRT淡水駅を出てすぐのところから始まる淡水観光の中心となるストリートです。淡水河沿いに伸びる通りには、ローカルグルメの屋台や昔ながらのお店、お土産店が立ち並び、散策するだけでも淡水らしい雰囲気を存分に味わえます。
かつて港町として栄えた淡水の歴史を色濃く残すエリアでもあり、建物の一部には清朝時代や日本統治時代の面影が感じられるのも特徴。観光地でありながら、地元の人の日常も垣間見える場所です。昼間と夜で違った表情を見せてくれるので、ランチとディナーに合わせて訪れるのがおすすめです。
紅毛城(Fort San Domingo)

紅毛城(Fort San Domingo)は、淡水を代表する歴史スポットで、淡水老街を進んだ先の坂を上った高台に位置します。17世紀に建てられた要塞で、台湾に残る最も重要な西洋式建築のひとつ。淡水の港町としての歴史を象徴する存在です。
「紅毛(ホンマオ)」とは、当時の漢民族が西洋人(赤毛)を指して使った言葉で、その名の通りヨーロッパ勢力が築いた城であることに由来しています。
- 1628年:スペインが淡水一帯を支配し要塞を建設
- 1642年:オランダがスペインを追い出し要塞を再建
- 清朝時代:淡水は国際貿易港として発展
- 19世紀後半:イギリスが領事館として使用
- 日本統治時代:管理下に置かれ保存
- 現在:台湾の国定古跡として一般公開
このように400年近い歴史があり、淡水のシンボルとして地元の人にも親しまれている施設になっています。
営業時間:9:30~17:00(土曜日は~18:00・屋外は9:30~22:00)
入場料:80元
淡水海関碼頭
淡水海関碼頭は、淡水紅毛城から坂を下った先に位置する、かつての税関(海関)と埠頭跡を整備した歴史スポットです。清代と日本時代に使用された税関関連の建築物が残っているなど、淡水が国際貿易港として栄えていた時代の名残を今に伝える場所で、港町・淡水の歴史を感じながら散策できるエリアとして知られています。
観光地化されすぎていない落ち着いた雰囲気が特徴で、老街の賑わいから少し離れて、ゆっくり景色を楽しみたい人におすすめです。
小白宮(前清淡水関税務司官邸)

小白宮は淡水の高台に建つ白い洋館で、19世紀後半に建てられた旧イギリス領事官邸です。紅毛城のすぐ近くに位置し、港町・淡水が国際貿易港として栄えていた時代の面影を今に伝える歴史建築として知られています。
名前の通り、白を基調とした優雅な外観と半円型アーチが特徴で、落ち着いた雰囲気の中で景色と歴史を楽しめます。
営業時間:9:30~17:00(土・日曜日は~18:00)
休館日:毎月第1月曜日
入場料:80元
淡水無極天元宮

1〜3月に淡水を訪れるなら外せないのが、新北市淡水区の高台に建つ道教寺院「淡水無極天元宮」です。桜の名所として台湾国内でも人気があり、台北近郊にありながら自然に囲まれた静かな環境ということもあって、春になると多くの人が訪れます。
最大の特徴は、五重塔を思わせる円形の独特な建築。台湾の一般的な寺院とは一線を画す外観で、遠くからでもひと目でわかる存在感があります。
営業時間:6:30~21:30
料金:無料
アクセス:北新荘方面行きのバスに乗車。「天元宮」バス停で下車
多田榮吉故居
多田榮吉故居は、淡水に残る日本統治時代の歴史的建築で、日本統治時代に第四代の淡水街長を務めた多田栄吉氏が暮らしていた旧邸宅です。淡水の住宅街に静かに佇むこの建物は、日本統治時代における淡水の暮らしや産業の発展を今に伝える、貴重な近代建築として保存・公開されています。
派手な観光地ではありませんが、淡水の歴史をより深く知りたい人にとっては見逃せないスポットです。
営業時間:9:30~17:00(土・日曜日は~18:00)
入場料:無料
淡水河沿いプロムナード(淡水金色水岸)

淡水金色水岸は、淡水河沿いに整備された美しい遊歩道エリアで、淡水を代表する夕日鑑賞&散策スポットです。MRT淡水駅からすぐの場所に広がり、淡水老街やフェリー乗り場とも隣接しているため、観光の流れの中で立ち寄りやすいのが特徴です。
名前の「金色水岸」は、夕方になると淡水河と空が黄金色に染まることから付けられました。その名の通り、天気のいい日の夕暮れ時には息をのむような景色が広がります。淡水を訪れたなら何よりも優先すべきスポットです。
淡水で絶対食べたいローカルグルメ

淡水観光の楽しみといえば、夕日や街歩きと並んで欠かせないのがローカルグルメの食べ歩きです。淡水老街を中心に、ここでしか味わえない名物料理が集まっており、少しずつ楽しめるのも魅力。ここでは、淡水に行くならぜひ食べてほしい定番グルメを厳選して紹介します。
淡水観光の楽しみといえば、夕日や街歩きと並んで欠かせないのがローカルグルメの食べ歩きです。淡水老街を中心に、ここでしか味わえない名物料理が集まっており、少しずつ楽しめるのも魅力。ここでは、淡水に来たらぜひ食べてほしい定番グルメを厳選して紹介します。
- 淡水名物No.1ソウルフード「阿給(アーゲイ)」
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阿給(アーゲイ)は、淡水を代表するローカルグルメで、その名前は日本語の「油揚げ(あげ)」に由来し、日本統治時代の食文化の影響を受けた料理でもあります。
揚げた油豆腐の中に春雨を詰め、魚のすり身でフタをして蒸し上げ、仕上げに甘辛い特製ソースをかけて提供されます。外は香ばしく、中はもちもちとした食感で、見た目以上に食べ応えがあります。甘辛いタレが特徴的で、日本ではあまり見かけない味わいですが、食べ進めるうちにクセになる人が多い一品です。
淡水老街には阿給の専門店がいくつもあり、店ごとに味やソースの濃さが少しずつ異なります。
- 淡水発祥の名物「鉄蛋(ティエダン/鉄玉子)」
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鉄蛋(ティエダン)は、淡水発祥の保存食で、濃厚な味付けが特徴の煮卵です。
卵を何度も煮ては乾燥させる工程を繰り返すことで、水分が抜け、味がぎゅっと凝縮されています。そのため見た目が黒く、「鉄のように硬そう」に見えることからこの名前が付けられました。実際には硬すぎることはなく、噛むほどに醤油ベースの旨みが広がります。
おやつやおつまみとして食べられるほか、個包装されているためお土産としても人気があります。
- やさしい味のローカルスープ「魚丸湯」
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魚丸湯は魚のすり身で作った団子「魚丸(ユーワン)」を使った、あっさり系ローカルスープです。魚丸は弾力があり、噛むとふわっとした食感が楽しめます。スープは透き通っていて優しい味わいのため、油っこい屋台料理を食べた後でも食べやすく、食べ歩きの合間の一杯としても最適です。
派手さはありませんが、地元の人に長く愛されてきた、素朴で安心感のある味が魅力です。阿給と合わせて注文するのがおすすめです。
- 食べ歩きの王道「烤魷魚(焼きイカ)」
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淡水老街を歩いていると、香ばしい匂いでつい足を止めてしまうのが焼きイカ(烤魷魚)です。丸ごとのイカを炭火や鉄板で焼き、甘辛いタレを塗りながら仕上げるスタイルが一般的で、外は香ばしく、中は柔らかい食感が楽しめます。イカの旨みとタレのコクが合わさり、シンプルながら満足感の高い屋台グルメです。
食べ歩きしながら淡水河を眺めるのにぴったりの一品です。
- 淡水ソフトクリーム・デザート
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淡水は散策の途中や食事のデザートにぴったりのローカルグルメも充実しています。
- 台湾カステラ
- 巨無覇霜淇淋(巨大ソフトクリーム)
- マンゴーミルクかき氷
- 豆花(トウファ)
- ミルク餅
これだけでもお腹いっぱいになってしまいそうなので、友だちとシェアするのがおすすめです。
クライマックスとして楽しむ淡水の夕日

淡水旅行のクライマックスともいえるのが「夕日」です。これを見るために淡水に行くなら「天気がいい日」としています。
定番スポットは淡水金色水岸。日が傾き始めると、淡水河の広い水面に夕日の光が反射し、空と川が少しずつオレンジ色へと変わっていきます。建物の多い台北市内ではなかなか見られない、開放感のある夕景が広がります。
おすすめ時間帯は日没の30分前〜日没後まで。何もする必要はありません。ただ静かに沈んでいく太陽と変化してく空の色を眺めていましょう。中国文化が好きな人や外省人の歴史が好きな人は「中国大陸に沈む太陽」をイメージすると感動はさらに大きなものになります。
おおよその日没時間を掲載しておきます。あくまでも目安であり、この時間の30分前には淡水金色水岸に到着できるようにスケジュールを組みましょう。
| 月 | 日没時刻目安 |
|---|---|
| 1月 | 17:15 |
| 2月 | 17:40 |
| 3月 | 17:55 |
| 4月 | 18:10 |
| 5月 | 18:25 |
| 6月 | 18:40 |
| 7月 | 18:50 |
| 8月 | 18:40 |
| 9月 | 18:15 |
| 10月 | 17:45 |
| 11月 | 17:15 |
| 12月 | 17:05 |
おすすめモデルコース(所要時間:約4〜5時間)

おすすめは午前中から淡水に行くことですが、台湾滞在時間が限られている人のために、午後に台北を出発して夕日まで淡水を楽しむモデルコースをご紹介します。
- MRT淡水信義線(赤ライン)に乗車
- 乗り換えなしで淡水駅へ
- 移動時間:約40分
駅を出るとすぐ目の前が 淡水老街があります。まずは淡水の風景とおやつがわりの淡水ローカルグルメを楽しみましょう。
- 阿給(アーゲイ)を軽く1品
- 鉄蛋や魚丸スープをシェア
- 屋台をのぞきながら河沿いへ
所要時間:60〜90分
老街の喧騒から少し離れ、港町らしい落ち着いた雰囲気を楽しみましょう。
- 淡水の貿易の歴史を感じる
- 河と船を眺めながらのんびり散歩
- おしゃれな写真を撮ってSNSでシェア
所要時間:20〜30分
淡水海関碼頭から少し坂を上って、淡水の歴史スポットへ。
- 紅毛城:淡水河を見下ろす要塞跡
- 小白宮:白い洋館と高台からの景色
※体力に自信がなければ、老街経由で金色水岸に直行してもOK。
所要時間:40〜60分
いよいよ淡水観光のハイライトである夕日鑑賞です。
- 日没30分前からスタンバイ
- ベンチに座って夕日を眺める
- 空と水面が金色に染まる時間を堪能
※時期によって日没時間が異なります。日没時間は上の表を参考にしてください。
ベストタイム:日没前〜日没後30分
夕日を見たら、淡水駅へ戻りMRTで台北市内へ。時間に余裕があれば夜の淡水老街を散策したり、ローカルグルメでディナーを楽しむのもOK。帰りに剣潭駅で下車して士林夜市に寄って夜市観光するのもおすすめです。
まとめ:晴れた日の淡水で台湾ローカルを満喫しよう
淡水は、台北からMRT1本で行けるにもかかわらず、街歩き・ローカルグルメ・歴史・夕日を一度に楽しめる、満足度の高い観光スポットです。定番スポットを組み合わせて半日観光することもできますし、穴場スポットも含めて1日かけて楽しむのもOKです
今回紹介した半日モデルコースは、すべて徒歩圏内(必要に応じてバス併用)で回れるため、初めての台湾旅行でも無理なく実践できます。特に晴れた日の夕暮れ時、淡水河が黄金色に染まる景色は、旅の記憶として長く心に残るはずです。
台北市内観光に少し余裕があるなら、ぜひ淡水まで足を伸ばしてみてください。ただし「天気がいいこと」が絶対条件です。雨の淡水も美しいものですが、まずは美しい夕日にこだわってみましょう。台湾で最も美しいとされる夕日は、台湾旅行をより特別なものにしてくれるはずです。
